その旋律に
心打たれて 

(4/6)

 MSX2の音源はPSG3声だというのは前に書きましたが、それを拡張するものとしてPanasonicからFS-CA1(MSX-AUDIO)というのが出ました。これは、FM音源(9声)とPCM音源(1声)を積んだ物で、FM音源はモノラルだったことも含めてX68000に質的にかなわなかったものの、PCM音源はX68000よりも良い物を積んだなかなかすごい物でした。しかしその形状は、横幅がFS-A1と同じだけあり、A1の上のカートリッジスロットに挿したときにデザイン上もっともぴったりくるもので、挿すとキーボードの奥に横長の壁が出来るような感じでした。ノートパソコンの液晶を上半分切り取った感じでしょうか。この異様なまでに大きく、特異な形状のカートリッジは当時のFS-A1シリーズ以外にはデザイン上マッチせず、物理的に使えない機種も多くありました。FS-A1シリーズを買わせるためにわざとやったのではないかという話も出たくらいです。PCM用のRAMを多く積むために大きなカートリッジになったという説もあるようですが、そのために値段が高く、対応ソフトもほとんど出ず、ゲームをするだけだった大半のユーザーに無視されてしまったようでした。

 これとは別に、これまたPanasonicからパナアミューズメントカートリッジ(通称PAC)というカートリッジが出ました。これはSONY PlayStationのメモリーカードなどとコンセプト的に同じ物で、中で8ブロック(?)ほどに分かれたセーブ領域にゲームのデータをセーブできるというS-RAMカートリッジでした。しかしこれも、カートリッジそのものの値段はそれほど高くなかったのですが、対応ソフトがほとんどでませんでした。

 これらの反省をふまえた、のかどうかは知りませんが、PanasonicからPACに安いFM音源を付けたFM音源付きゲーム用S-RAMカートリッジ(通称FMPAC)が出ました。このカートリッジはちょっと縦長なだけで形状的には問題なく、値段も7800円かなんかそれくらいで高くなく、このFM音源(MSX-MUSIC)に対応したゲームが増えるにつれて爆発的に普及し、MSXシリーズ用音源のディファクトスタンダードになってしまいました。名称から言ってS-RAMがメインのように思えるのですが、普及した割にS-RAM対応ゲームはそれほど増えなかったようにも思います。MSXのゲームはアクションが多かったからなのか、それともこの頃にはFD版のゲームも多く出ていたからなのかはよくわかりません。コナミが対応ソフトを出さなかったというのも、そう感じさせる大きな要因の1つかもしれません。シミュレーションゲームなどには容量が少なかったようですし。

 私はまだ対応ソフトの少ない、比較的初期の頃にFMPACを購入しました。そのため他のMSX2ユーザーな友人達に、「えぇー、そんなの買ったのぉ?もったいない」と言われてしまいました。

 しかし対応ソフトは増え続け、コナミ以外の多くのメーカーのゲームが対応するようになると批判的だった友人達も購入していき、私が先見の明を持っていたことが証明されました(?)。

 MSX-MUSICはFM9声+PSG3声の計12重和音を出せるので、私がFMPACを買って最初に作ったのは12重和音の「かえるの合唱」でした。延々繰り返すのではなく、一応「ジャン」って感じで落ちを付けて終わらすようにしてあったりました。それまでずっとPSGのみだったのでなかなか感動ものでした。

 この当時結構ゲームミュージックがはやっていたように思います。アーケードゲームの音源スペックが上がったこと、パソコンではイースなどの単独でも十分鑑賞に堪えうる音楽が出てきたことなどがきっかけとなったのでしょう。ゲームミュージックのCDが次々と発売され、私も友達から借りたり、自分で買ったりしてよく聞きました。

 そこで私も何となく、MSX-MUSICでゲームミュージックをならそうと音楽の打ち込みを始めたりしました。音楽の出来る人はCDを聞きながらそれを楽譜に落としていく「音取り」とか「耳コピ」とか言われることをするようですが、私にはとてもそんなことの出来る耳はありません。しかし、CDには全曲ではないものの楽譜が付いている物も多かったですし、ベーマガに楽譜が載ることも多かったので、それらをMMLに変換していくという方法で打ち込みしてました。




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