その旋律に
心打たれて 

(6/6)

 それまではずっとハンドアセンブルでマシン語をやっていたのですが、アスキーから安いアセンブラが出ているのを発見したのでそれを購入してみました。

 最初に作ったのはMSX2を買って最初にスプライトを使って作った簡単な対戦ゲームでした。しかし、速度差を見るためにわざとウェイトを入れなかったため、速すぎてゲームになってませんでした。当たり前ですが。

 MSXのBasicにはCMD(あと確かIPL)という未使用の予約語がありました。これのフックを書き換えて自分のプログラムに飛ぶようにすれば、自分でBasicの命令を増やすことが出来るようになっていました。そこでこれを利用して、MSX2-Basicではなぜかサポートされてなかった縦スクロールを制御する命令を作ってみたりしました。バックグラウンドで勝手にスクロールするようにしてみたりして。しかしこれを使った物は作りませんでしたけど。

 MSXシリーズは、MSX2のあとMSX2+というのが出ました。MSX2+は横スクロールのサポートと19268色モードの追加、規格としてMSX-MUSICの採用といった点が変わりました。

 MSX2は縦スクロールしかできなかったため、ゲームユーザーの多かったMSXにとって横スクロールのサポートは重要なことでした。しかしこれはやはりMSX2で採用すべきだったようです。MSX2+発売直後にいくつかのメーカーが専用ソフトを出したものの、MSX2ユーザーがほとんどの状況ではそれも続かず、この程度の機能差では買い換えも見込めず、その後はいくつかのゲームでMSX2+だと横スクロールがなめらかになる、といった程度の対応しかされませんでした。

 一見目玉に見えた19268色モードも、実際には横何ドットかでひとかたまりとしてしか色指定できず、ゲームのタイトルなどでMSX2+ならきれいな取り込み画像を見せる、という程度の差別化くらいにしか使われませんでした。一応このモードに対応したお絵描きソフトも出たようですが、手軽なお絵描きというふうには行かなかったことでしょう。

 このころはすでにPC-9801やX68000などの16bitマシンに時代が移りつつあり、せっかく上位機種を出したのに処理速度を全く上げなかったのも私をがっかりさせた点です。

 この段階でMSX3といえるような機種を出していればMSXももっとおもしろいパソコンになっていたかもしれないなんて思います。互換性の問題もあるし、家電品というその性質上家庭用テレビを捨てるわけにはいかないので、値段的にゲーム機と勝負できない以上無駄かもしれませんが。

 この段階ですでにMSXをやっているのはPanasonicとSONYとサンヨーくらいになっていましたが、MSXシリーズそのものにまだ人気があったので、MSX2+も結構売れたんではないかと思います。友達も何人か持ってました。

 その後MSX TurboRというのが出ました。私はこれが出る直前にX68000に寝返ってしまったのであまり詳しく知らないのですが、CPUがR何とかというZ80互換の16bitCPUになり、PCM音源も標準装備したようです。グラフィックの能力が変わったかどうかは記憶していません。

 しかし残念ながらこの時点ではもうMSXシリーズはかなり衰退しており、TurboRもPanasonicしかマシンを出さなかったようでした。機能的にはなかなか良いマシンのようでしたので、これがMSX2+の時点で出ていればと思わざるを得ませんでした。

 ハードウェアとしてのMSXはTurboRで終わってしまいましたが、MSXのディープなファン達が「MSXエミュレーター」という他のパソコンでMSX用のソフトを動かしてしまおうというソフトを開発しています。日本でメジャーな最近のパソコンにはほとんど対応しているので、パソコンの統一規格というMSXの精神がユーザーによって受け継がれているようにも感じられます。Javaよりも対応機種は多いようなので、独自に拡張した規格を立てればJavaの向こうを張る裏の統一規格になるかもしれません。Javaとはコンセプトが違いますが。

 MSX2とは結局3年半ほどのつきあいでした。MSXはその普及率と人気のおかげでソフトもハードも安くて種類が豊富にあったというのが魅力の1つだったと思います。あとグラフィック関係の機能が豊富で、VDP命令でVDPを直接たたいて何に使うのかわからないような機能をいろいろ試してみるのも楽しかったです。多くのユーザーはゲームオンリーだったのではないかと思いますが、ユーザーが多いので雑誌などでもいろいろな話題が出て、パワーユーザーによるおもしろい試み、例えばカセットインターフェースを使った1bitサンプリングなども出て、楽しかったと思います。私もプログラムを入力してサンプリングしましたが、ノイズがひどくてとても実用にはなりませんでした。しかし、サンプリングできるというそのこと自体がおもしろくて、結構遊びました。

 さらに周りにも何人かユーザーがいて、「友達と同じパソコンを使っていく楽しみ」みたいな物を感じられたパソコンでもありました。

 MSX2は私にとって「みんなと楽しく遊べるパソコン」だったように思います。




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